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トラップ

スチームトラップの前後・周辺配管の注意点について

配管・装置・プラント技術 2004年春季号掲載

スチームトラップの前後・周辺配管の注意点について

(株)テイエルブイ  林 恵子

1.はじめに

スチームトラップは、生産性向上を目的とする蒸気使用生産設備には欠かすことのできない、省エネルギー機器である。

本稿では、スチームトラップの能力を最大限に生かし、蒸気設備の生産性を高く保つために必要な、スチームトラップ周辺配管の注意点について紹介していく。

2.スチームトラップとは
2-1 スチームトラップの機能

スチームトラップ(以下、トラップ)は、ドレン(凝縮水)および空気を排出し、蒸気を止めるという機能を持つ自動弁である。

蒸気を熱源とする装置(熱交換器、空調機、ジャケット釜など)の蒸気ラインの末端に設置される。

図1に代表的なトラップの作動原理を紹介する。

図1 スチームトラップの作動原理(フローフロートトラップ)

2-2 スチームトラップの必要性

トラップを設置する目的は、蒸気を漏洩させず、ドレンによる不具合を防ぐことである。

ドレンによる不具合の代表的なものにウォーターハンマーがある。例えば、蒸気配管中にドレンが滞留していると、蒸気の早い流れに引っ張られ、水の塊となって高速で配管・機器にぶつかり、騒音・破損を生じる。

また他の不具合としては、ドレンが熱交換器などの内部に滞留すると、蒸気伝熱面積の縮小により熱交換効率が低下したり、機器が腐食したりすることなどが挙げられる。

これらの不具合を防ぐため、ドレンを速やかに排出し、配管・機器内を常に蒸気雰囲気にすることがトラップの役割である。

2-3 スチームトラップの特性

トラップ周辺の配管について説明する前に、設置に関して注意しなければならないトラップの基本的な特性について紹介する。

  • ①トラップはドレンを吸引しているわけではないので、ドレンはドレン発生機器からトラップ内に、自然流下にて流入させなければならない。
  • ②トラップは入口と出口の差圧によってドレンを排出しているため、トラップの入口圧力は出口圧力よりも高い状態にしなければならない。
  • ③トラップは作動圧力差(入口圧力と出口圧力の差)によって排水能力が決まっている。
  • ④トラップは入口と出口がある。つまり、流れ方向が決まっている。出入口を逆にすると機能しない。
  • ⑤トラップの種類によっては、水平・垂直の取付方向が決まっているものがある。取付方向を誤ると機能しない。
3.スチームトラップ入口配管の注意点
3-1 基本事項

トラップの特性を踏まえ、トラップ入口側配管では以下の点に注意する。

  • ①ドレンを自然流下でトラップ内に流入させるために、トラップは機器のドレン取出し口より近い位置に下がり勾配で設置する。
  • ②蒸気とドレンが置換し易いように、太く、短く、曲がりの少ない配管にする。
  • ③ゴミ・スケールによる詰まりや弁漏れが起こるおそれがあるので、ゴミ・スケールの流入を防止する。
3-2 蒸気配管からのドレン排除

蒸気配管では、ウォーターハンマーを防ぐため、以下の場所にトラップを設置する。

  • ①ドレンの滞留し易い場所(例えば、長い立ち上がり配管直前や管末など)
  • ②長い横引き配管は30~50m毎に設置
  • ③制御弁や減圧弁など、ドレンの影響を受けやすい機器の手前に設置

図2に蒸気配管における、ドレン排除の必要箇所を示す。

図2 蒸気配管におけるドレン排除の必要箇所

発生したドレンは自重によって配管の底を流れるが、蒸気と共に高速で流れるため、ドレンを確実に排出するには大きめのドレンポケットが必要になる。ドレンポケットの底には錆・汚れが堆積するので、トラップへの配管はポケットの横から取るようにする。

図3にドレンポケットの例を示す。

図3 ドレンポケットの例

3-3 一般的なドレン排除の問題と対策
(1) ウォーターハンマー

蒸気配管中では一般に蒸気は20~30m/sで流れている。ウォーターハンマーは、水の塊が蒸気とともに高速で流れ、曲り管など流れの方向が変わったときに配管にぶつかって発生する現象である。図4に蒸気配管中のウォーターハンマーの発生過程を示す。

図4 蒸気配管中のウォーターハンマーの発生

この衝撃によって、配管の振動や騒音の発生、配管機器(エルボ、チーズ、バルブ、伸縮継手など)に損傷を生じることがあり、注意が必要である。

ウォーターハンマーは、蒸気配管中に滞留するドレンが原因となって発生するので、これを防ぐためには、要所で確実にドレンを排除する。

(2) スチームロッキングとエアバインディング

トラップ内に蒸気が流入すると、トラップは閉弁する。

入口配管が細く、気液分離が難しい場合、トラップ入口にドレンが溜まっても、トラップ内の蒸気が放熱によって凝縮するまでドレンがトラップ内に流入できず、ドレンが排出されない現象が起こる。これをスチームロッキング(蒸気障害)と言う。

スチームロッキングを防止するためには、トラップ入口配管サイズを大きくして気液置換が行なわれやすいようにする。

トラップサイズよりも入口配管のほうが小さい場合にもスチームロッキングが起こりやすいので、入口配管サイズは、トラップサイズ以上にする。

スチームロッキングの発生する例を図5に示す。

図5 スチームロッキング

またこれとは別に、トラップに空気排除機能がない場合に、トラップ内に空気が流入しても同じような現象が起こる。これをエアバインディング(空気障害)と言う。

この場合、空気は蒸気のように放熱によって凝縮することがないため、空気を排除しなければドレンを排出する事ができない。

エアバインディングを防止するためには、空気を排気するエアベントやエアベント機能を内蔵したトラップを使用する。

(3) グループトラッピング

複数の装置に対してトラップを1台設置することをグループトラッピングという。

トラップの数を減らす事ができるので設備コストを節減できるが、この方法はスチームロッキングによるドレン滞留が発生しやすいため、お薦めできない。

図6にグループトラッピングによるスチームロッキングの発生過程を示す。

図6 グループトラッピングの問題

複数の装置は同じであっても、負荷の違いによりドレン発生量が異なる。すると、ドレンの発生している装置からはトラップへドレンが流入しようとし、発生していない装置からは蒸気が流入しようとする。ここで、トラップに蒸気が流入すると、スチームロッキングを起こして別の装置からのドレンはトラップ内に流入できず、ドレン滞留を起こしてしまう。

各装置にはそれぞれ1台ずつトラップを設置すると、各装置のドレン発生量に応じてドレンが排出されるようになり、この問題は解消される(図7個別トラッピング)。

図7 グループトラッピングの解消(個別トラッピング)

ドレン滞留がなくなるため、安定した装置温度を得られるようになり、また腐食やウォーターハンマーの発生も防止できる。

4.スチームトラップ出口配管の注意点
4-1 基本事項

トラップ出口側配管では以下の点に注意する。

  • ①トラップ出口にかかる背圧がトラップ入口圧力よりも常に低い状態にする。
  • ②トラップ出口を立上げ配管にする場合は、ドレンの逆流を防止するため逆止弁を設置する。
  • ③ドレン回収配管は、ドレンと、高温ドレンが低圧へ放出された際に生じるフラッシュ蒸気が混在した2相流となるため、フラッシュ蒸気の体積を考慮した配管径にする。
  • ④ドレンをピットなどへ排水する場合、出口配管を水につけない(図8)。

    図8 ピットなどへのドレン排出

  • ⑤立上げ配管をドレン回収配管へ接続する場合は上から入れる(図9)。

    図9 トラップ回収配管の接続

4-2 一般的なドレン排除の問題と解決策
(1) ドレン回収配管の立上げと背圧

省エネルギーのためにドレン回収を行なうことは多いが、その場合、高い位置にあるドレン回収配管までトラップ出口配管を立上げなければならない。立上げ配管があると、その高さ分の水頭圧が背圧としてトラップにかかってくるので注意が必要である(立上り1mあたり0.01MPaGの背圧がかかる)。

装置の運転圧力がトラップの出口圧力よりも低い場合は、ドレンは排出できず装置内にドレンが滞留する。例えば、装置運転圧力0.1MPaGの時に、出口配管が10m以上立ち上がっているとトラップの出口には0.1MPaG以上の背圧がかかり、ドレンを排出できない。

(2) ストール現象

トラップの入口圧力(装置入口圧力)が装置入口制御弁の開度によって、トラップの出口圧力より高くなったり低くなったりする事がある。このときトラップは入口圧力が高いときは排水できるが、入口圧力が低い時はドレン滞留する。このような現象をストール現象と言い、特に低温の温度調整をしているためバルブ開度が小さいような熱交換器などでは発生しやすい。ストール現象によりドレン滞留が起こると、機器・配管の腐食、ウォーターハンマーによる機器の破損・騒音・振動などの問題が発生する。

ストール現象を解決するには2つの方法がある。ひとつは、発生したドレンを自然流下で熱交換器から排除し、ある程度溜まったら別の操作気体で押出す方法で、これにはトラップ内蔵メカニカルポンプが用いられる。

もうひとつは、トラップ出口配管を大気圧以下の負圧にしてトラップの作動圧力差を確保する方法で、これには真空ポンプが用いられる。

5.スチームトラップ周辺の付属品

図10はトラップ周辺の配管例を示したものである。使用条件に応じて、必要な付属品を設置する。

図10 トラップ周辺配管例

5-1 前後バルブ

トラップの前後には保守・点検時用に仕切弁を設置する。トラップが故障した場合に、安全に交換・メンテナンス作業ができる。

5-2 ストレーナ

トラップ内にゴミ・スケールを流入させないよう、ストレーナをトラップ入口に設置する。ただし、トラップの多くにはスクリーンを内蔵しているので、ストレーナが必要ない場合もある。

5-3 サイトグラス

トラップ出口配管が集合配管になっている場合は、ドレン排水状況が確認できない。目視で確認する場合はサイトグラスをトラップ出口に設置する。

5-4 逆止弁

トラップには逆流防止機能は無い。蒸気停止時のドレンの逆流を防止するために、トラップ出口には逆止弁を設置する。ドレンの逆流により、装置内ドレン滞留による腐食、スケールの逆流によるトラップの故障の原因となる。

出口配管が集合管になっている場合や出口配管が立ち上がり配管の場合など、逆流が起こりやすい条件の時は設置する。

5-5 バイパス配管

原則的に、トラップに異常があっても運転停止できない装置などではトラップにバイパス弁を設置するようにする。トラップ補修中は、トラップの代わりにバイパス弁を調整しながらドレンを排出させる。

6.まとめ

ここではドレン排除におけるスチームトラップ廻りの基本的な原則を紹介した。工場などでは、様々な加熱装置で蒸気は熱源として使用されており、紹介した他にもドレン排除のための様々な工夫がなされている。蒸気システムの運転効率を最大限にするには、蒸気やトラップの特性を理解し、最適なトラッピングをすることが必要である。