半径2kmもの範囲に点在するスチームトラップの管理に手が回らない…
スチームトラップ点検・管理をTBMからCBMへと見直し
点検工数の削減と省力化を実現。
熱供給システムの効率化を図るため、スチームトラップ管理にも力をいれてこられましたが、スチームトラップは数も種類も多く、広範なエリアに設置されているため、従来のメンテナンス方法では手が回らなくなっていました。
TLVのスチームトラップ・マネージメントシステムを採用し、定周期保全(TBM)から状態基準保全(CBM)へと見直すことで、スチームトラップのメンテナンスにかける工数を削減し省力化を実現された事例です。
みなとみらい二十一熱供給株式会社様
所在地 | 神奈川県横浜市 |
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事業内容 | 蒸気、冷水などの熱供給に関する事業他 |
使用用途 | 地域冷暖房 |
採用いただいたサービス
- スチームトラップ診断
- ドレン排出箇所管理(BPSTM)プログラム
お悩み
年々、型式・管理対象の数が増えるスチームトラップのメンテナンスに手が回らなくなってきた
1990年代は、年1回の定期メンテナンスとして全数開放点検と、月1回の巡回点検で作動状態の確認を実施されており、それらのオペレーションでスチームトラップのトラブルには問題なく対応できていました。しかし、建設された年代が異なる工区ごとに仕様や型式の異なるスチームトラップが導入されてきて徐々にメンテナンスが煩雑になってきたことや、2008年前後に大手企業の本社機能移転などが相次ぎ、みなとみらい地区の蒸気配管の延伸にともないスチームトラップの総数が300台強になったこともあり、その開放点検には、作業時間2ヶ月×3~4名がかかるようになりました。また蒸気の供給範囲はボイラーから半径2kmと非常に広範にわたるため、このままでは従来のメンテナンス方法では人手が回らなくなることは確実でした。
問い合わせのきっかけ
スチームトラップメーカーとして何度も訪問していたTLVに相談
運転開始当初は他メーカーのスチームトラップも採用されていましたが、TLVのスチームトラップは品質が良く、故障が少ないことから次第にTLV製のスチームトラップへと切り替えを進められており、頻繁に訪問していたTLVの営業担当者にメンテナンスに関する悩みを相談されたことがきっかけになりました。
解決策
スチームトラップ点検をアウトソースし、蒸気システムを「視える化」
スチームトラップのコンディションを正確に診断し、異常があったものに対して計画的に処置するという状態基準保全(Condition Based Maintenance)を行うため、「TrapManサーベイ」をご採用いただきました。TrapManサーベイは、メーカー・機種を問わず作動状態の判定と蒸気漏洩量の定量化ができるスチームトラップ診断で、TLV社内の有資格者が専用の診断器を用いて行うので、自社で点検するよりもスピーディーかつ正確なデータが得られます。また、TLVから報告書、台帳、プラントマップ(スチームトラップの診断結果がわかる配置図)が迅速に提供されるため、すぐに交換のためのアクションにとりかかることができ、年間損失額なども把握できるようになります。
改善結果
金額ベースで10%に達する点検・修理費用の低減に成功するとともに、所要期間を2カ月から1週間に削減。
蒸気システムの健全性を維持する体制を構築し、人手不足の課題を解消
以前の全数開放点検に対し、作業は本サービスを採用したことで不良分のみの修理となったため、メンテナンスにかかる工数の削減を実現することができ、点検費用と修理費用を合計した総費用は約10%の削減効果となりました。さらに、何より効果が大きいのは、3~4名で2 カ月もかかっていた開放点検が、お客様1名が1 週間TLVの診断に同行するだけでよくなり、大幅な期間短縮を達成されました。
蒸気の「視える化」で浮かびあがった新たな課題解消への取り組み
自主メンテナンスによる整備不良の是正、不明蒸気のさらなる抑制が課題
TrapManサーベイを導入しても、発見した不良分はお客様がメンテナンスされていたのですが、不完全なメンテナンスによる蒸気漏れや故障の再発が起こることがありました。また、スチームトラップを交換したにもかかわらず少なからず不明蒸気も存在していたためTLVが調査を実施したところ、新しく交換したフリーフロート・スチームトラップから少量の蒸気漏れがあることが判明し、1つ1つのスチームトラップからの蒸気ロスが全体的に大きくなり、それが不明蒸気につながっていると判断されました。蒸気システムを視える化したことで、不明蒸気を明らかにして抑制していくという新たな課題が生まれました。
スチームトラップの管理から、ドレン排出箇所を最適化するという考え方へ
新たな課題を解決するために、スチームトラップ管理をさらに進化させた「ドレン排出箇所を最適化する」という新発想が必要でした。
前述の新しく交換したスチームトラップは省エネタイプのフリーフロート型ではあるものの、熱交換器にも使用できるタイプであり、このタイプはドレンが極めて少ない蒸気輸送配管では少量の蒸気ロスを発生させていました。より蒸気ロスを少なくする場合には、フロート3点支持機構と呼ばれる構造の蒸気輸送配管用のスチームトラップへ交換すること、そしてメンテナンスの不備を防止するためにも、それ以外の箇所も全ての製品を最適モデルへ交換することの2点に取り組みました。ドレンを排出すべき箇所の条件に応じた最適モデルを選定し、全てのドレン排出箇所を最適な状態にするこれらの提案が含まれているドレン排出箇所管理(BPSTM)プログラムを採用されました。
スチームトラップからの蒸気漏れを低減し、くり返し不良もゼロに
このプログラムを導入することで、スチームトラップが多く設置されている蒸気輸送配管におけるドレン排出箇所1カ所あたりの蒸気ロスは、平均1.5㎏/hから0.1kg/h以下へと低減することに成功されました。また、スチームトラップのくり返し不良が発生していた用途でもプログラム導入後は全く不良が発生しなくなりました。社内工数削減の観点でも、最適なスチームトラップの選定リストや交換工事の方法について明確になったことから、社内調整や確認業務が減少し導入前と比べて効率的な管理の実現に貢献しています。
お客様の声
プラント管理部
次長 堀内 隆史様(写真左)
副主事 斧淵 俊明様(写真右)
※2019年当時
「今後の業務負荷が増大することを見越して、アウトソース業務の検討が社内でも話題に上がっていたところ、TLVよりTrapManサーベイを提案いただき、省力化に成功しました。TrapManサーベイにより社内の工数を他設備の管理工数に充てられるようになり、みなとみらい地域の安定した熱供給が維持できています。また、TrapManサーベイ導入後でも、トラップの修理不備や正常トラップからの蒸気ロスが課題として存在したため、さらなる改善を目的にBPSTMプログラムの採用を決定しました。TrapManサーベイとBPSTMプログラムの継続運用により、今では不良率も毎年5%以下で推移できており、蒸気ロスもほとんど発生しておらず、安心したプラントの維持管理ができています。」