ドライヤーの効率を改善して生産量を増やしたい・・・
蒸気減圧減温システム(RGDS)の導入で乾燥効率を改善し、増産を実現
ある化学工場様では需要の増加に対応するため、生産量を増加させたいと考えておられました。
検討の結果、ベルトコンベヤーと組み合わされたドライヤー(連続式熱風乾燥機)の速度アップが生産量に大きく寄与することがわかり、改善テーマとして位置づけられました。
連続式熱風乾燥機は蒸気を熱源とする熱交換器で熱風を生成して送り込む構造です。この熱風乾燥機の熱源蒸気を過熱蒸気から飽和蒸気に変更して大幅な効率改善を実現し、コンベヤーの速度アップ→生産量増加に結び付けた事例です。
過熱蒸気を飽和蒸気に変える役割として蒸気減圧減温システム(RGDS)が採用されました。
大手化学会社様
使用装置名 | ドライヤー |
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生産物 | 粉体(電子材料) |
採用いただいた製品
お悩み
乾燥工程がボトルネックとなり増産ができない
ドライヤーに供給する蒸気の圧力と温度を高めても乾燥時間を短縮することができず、乾燥工程がボトルネックとなって増産が実現できずにいました。
問い合わせのきっかけ
TLVによる省エネ診断を受ける機会があり、相談を持ち掛けた
TLVによる工場全体の省エネ診断を受ける機会を捉えて、省エネテーマとは異なる効率改善テーマも相談に乗ってもらい、現場の確認と調査をしてもらいました。
解決策
蒸気減圧減温システム(RGDS)を導入してドライヤーに飽和蒸気を供給
ドライヤーを調査した結果、熱源として供給されている過熱蒸気を飽和蒸気に変更する必要があることを指摘されました。
※過熱蒸気と飽和蒸気については、もっと知りたい蒸気のお話の蒸気の状態による分類で解説しています。
伝熱量QはQ=A×U×ΔTで表わされる。
- A : 伝熱面積、 U : 総括伝熱係数、 ΔT : 温度差
- 伝熱面積 : 過熱蒸気の時=飽和蒸気の時、 総括伝熱係数 : 過熱蒸気<飽和蒸気、 温度差 : 過熱蒸気>飽和蒸気
本件条件では、温度差は過熱蒸気の方が1.5倍程度大きく取れるが、総括伝熱係数は飽和蒸気の方が数倍大きくなるので、トータルとしては飽和蒸気の方が伝熱量が大きくなる。
更に、過熱蒸気で温度差を活用するためには顕熱加熱とせねばならず、スチームトラップを使わずに、排気しなければならない。
スチームトラップが設置された熱交換器では大きな温度差が活用できない。
元々、タービン排気の過熱蒸気が場内に存在していたことと、従来自社内では温度が高く、ドレンが発生しにくい過熱蒸気の方がドライヤーの熱源として適していると言われていたことで、ドライヤーへは過熱蒸気を供給していました。過熱蒸気が原因で効率が低下していたことは想定外でした。
早速、熱源蒸気を飽和蒸気に変更してテストを実施したところ、効率改善が見込める結果が得られたため、熱源蒸気を飽和蒸気に切り替えることが決定されました。
そのための飽和蒸気は、遠方から別配管で供給するのではなく、従来供給していた過熱蒸気の配管に蒸気減圧減温システム(RGDS)を組み合わせることで、ドライヤーの手前で飽和蒸気にすることにしました。
改善結果
コンベヤー速度10%アップを達成し、生産量増加を実現
ベルトコンベヤーの速度を10%アップしても規定の水分率をクリアできるようになり、時間当たりの生産量が増加しました。さらに、フル生産状態の蒸気制御弁開度は従来100%だったものが75%で運転できるようになり、省エネも実現できることになりました。
この結果を受けて、残る2台のドライヤーにも蒸気減圧減温システム(RGDS)を導入して熱源蒸気を過熱蒸気から飽和蒸気に変更することが決断されました。
改善前:過熱蒸気を供給
過熱蒸気を熱源としてドライヤーの熱交換器に供給していたときは、熱風量が十分ではなく、ベルトコンベヤーの速度を落とさないと所定の水分率まで乾燥させることができませんでした。
ベルトコンベヤーの速度を上げられないことが、この工程がボトルネックになっていました。
改善後:蒸気減圧減温システム(RGDS)で過熱蒸気を飽和乾き蒸気に変更
飽和蒸気を熱源としてドライヤーの熱交換器に供給することで、同じ熱交換器のままで十分な量の熱風を生成することができるようになりました。その結果、ベルトコンベヤーの速度をアップしても所定の水分率まで乾燥させることができるようになりました。
ベルトコンベヤーの速度がアップすることで、時間当たりの生産量が増加しました。
お客様の声
「過熱蒸気と飽和乾き蒸気の違いを理解せずに、高温の蒸気が供給できる過熱蒸気を使用していました。
蒸気のスペシャリストのTLVさんには、これまでの方法に囚われている私たちの目を覚ましてくれる様々な有効な情報を教えていただき、本当に助かっています。」