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配管
蒸気輸送配管の口径
蒸気輸送配管を設計するために
配管を設計するには、以下のような様々な項目を決定する必要があります。
- 管の太さ(口径)の選定
- どこを通すかという経路の決定
- 熱応力も考慮しての支持点や伸縮量吸収方法の決定
- 適正な断熱保温
- 効果的なドレン抜き箇所の決定、など
その中でも最重要項目の一つである口径の選定について考えてみます。
蒸気流量が分かれば口径を選定できる?
管の太さはどのようにして決めたら良いでしょうか。細い管より太い管の方がより多くの流量を流すことができる、つまり「蒸気送気量が多ければ太い管が必要、送気量が少なければ細い管で十分」これは直感的に理解できます。
では、例えば蒸気流量1000kg/hに対して適正な管径はいくらでしょうか?残念ながら、1000kg/hという値だけでは判断できず、別の基準にも照らして評価しなければなりません。その基準になるのが管内流速です。管内を流れる蒸気の質量流量は次の式で計算できます。
質量流量[kg/h] = 管断面積[m2]×流速[m/h]×比重量[kg/m3]
通常、蒸気流量は質量流量([kg/h]など)で表されます。蒸気は圧力によって比体積(=1/比重量)が大きく変化します。例えば、0.1MPaG蒸気1kgは1.0MPaG蒸気1kgと比べて4.9倍体積が大きくなります。
そのため、もし同じ質量流量を同じ流速で流すなら、0.1MPaG蒸気の場合は、1.0MPaG蒸気の場合に比べて4.9倍の断面積をもつ管で流さなければなりません。
または、同じ質量流量を同じ管径で流すなら、0.1MPaG蒸気の場合は、1.0MPaG蒸気の場合に比べて4.9倍の流速で流す必要があります。
つまり、同じ蒸気流量でも圧力が低ければ蒸気の比重量が小さくなるため、同じ管に同じ流量を流した場合、管内流速が速くなるということです。では、基準となる管内流速は何を持って判断すれば良いのでしょうか
適正な流速 慣用流速
適正な流速とは、その流速で流した時のメリット・デメリットのバランス、言い換えればイニシャルコストとリスクのバランスが取れているポイントと言え、慣用流速として知られています。
飽和蒸気の場合、慣用流速は30m/sec.程度と言われています。化学便覧などには圧力や用途、部位、管のグレードなどに応じて20m/sec.から40m/sec.の範囲でやや細かく示されているようです。
流速を速くしていくと増大するメリットとは、管径を小さくできることです。管径を小さくできればイニシャルコストを抑えられます。
逆に、流速を速くしていくと増大するデメリットとは、圧力損失、騒音、エロージョンやウォーターハンマーのリスクなどです。
最終決定前に圧力損失値を確認
このように慣用流速を基準に口径選定をすることで、イニシャルコストとリスクのバランスが取れた管径を定めることができます。
但し、まだこれで口径を最終決定できる訳ではありません。最終決定の前にもう一点確認しなければならないことがあります。それは圧力損失値です。
圧力損失は配管距離に比例します。適正な流速であっても管が長ければ長いほど末端での圧力損失は大きくなるため、遠方まで送気する場合は末端で必要な蒸気圧力が得られるかどうかをシミュレーションしなければなりません。
配管が長くなると圧力損失で、必要な蒸気圧力得られなくなります
- 配管が短い場合(必要な蒸気圧力が得られる)
- 配管が長い場合
配管径を大きくすることで圧力損失が小さくなるため必要な蒸気圧力が得られます
圧力損失が大きいから、距離を短くして途中までで我慢する・・・と言う訳にはいきません。必要な所まで蒸気を送気しなければなりません。圧力損失の結果、末端で必要な圧力を得られない場合は、配管径を大きくする検討が必要です。
- 配管が太い場合(必要な蒸気圧力が得られる)
- 配管が細い場合