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スチームトラップの基本
メカニカルトラップ
気温や雨などの外的変化にも作動が安定!
蒸気とドレンの比重差を利用して作動するスチームトラップで、作動原理に相変化や温度変化などを用いません。そのため、メカニカルトラップではドレンの有無とスチームトラップの開閉弁動作が連動することになります。このことはスチームトラップにとってかなり重要な意味を持ちます。
サーモスタティックタイプやサーモダイナミックタイプのトラップが外気温や降雨などドレンの有無以外の外的要因に左右され易いのに対して、メカニカルタイプはそれらの影響を受けにくいのです。つまり、ドレンの有無に連動して正確な作動を行うトラップであると言えます。
シンプルな構造!作動原理も明快です
浮力体としては、閉じた構造のフロート、開放構造のバケットがあり、それぞれの浮力体を用いたスチームトラップはフロートトラップ、バケットトラップと呼ばれています。バケットタイプは、コップのようなバケットが下に向かって開いている下向きバケットが主流です。両者は浮力を利用する点は共通ですが、構造も作動原理も異なります。
フロートタイプ
フロートの位置とトラップ内部のドレン液面の位置が一致する為フロートを液位検出および弁駆動に利用しています。
例えるならば、流れ方向は逆ですが、水洗トイレのタンク内に見られる「ボールタップ」の構造と同じです。フロート自体が弁体も兼ねるのがフリーフロートタイプです。
バケットタイプ(下向きバケット)
バケットの周囲が全てドレンで満たされた状態で、バケットの内側空間に蒸気が流入すれば浮力が生じてバケットが上昇し、バケットの内側空間にドレンが流入すれば浮力が無くなりバケットが降下します。この動きを弁の開閉に利用しています。
お湯をはった湯船に裏返しにした洗面器を浮かべた状態をイメージすると理解しやすいと思います。洗面器内が空気で満たされていると浮かびますが、空気を抜いて内部をお湯で満たせば洗面器は沈んでいきます。
連続排出はドレンを滞留させない作動です
フロートタイプとバケットタイプの作動原理の違いは、ドレン排出状態の違いとしても現れます。
- フロートタイプは連続排出
- バケットタイプは間欠排出
連続排出するフロートタイプ
連続排出とは、ドレン流入量に応じてフリーフロートが上下し、弁開度を自動調節します。つまり、ドレンが流入すれば、入ってきた量だけ排出され、流入してくるドレンが無ければ閉弁します。
間欠排出するバケットタイプ
一方、間欠排出は、ドレンを排出している時間=開弁時間とドレンを排出しない時間=閉弁時間 が交互に現れます。バケットタイプの作動間隔は短く数秒間で開閉が繰り返されます。
ドレンの発生は連続的です。スチームトラップの作動に合わせてドレンが発生するわけではありません。従って、間欠排出の場合、スチームトラップが閉弁状態にあるとき、一時的にスチームトラップ手前にドレンが滞留することになります。
極少ドレン時 浮力体により作動状態が異なります
ところで、過熱蒸気配管など、元々ドレン発生量が極めて少ない用途にもスチームトラップは設置されます。そのため、極少ドレン環境でのスチームトラップの作動状態をよく知っておく必要があります。
浮力を利用するメカニカルタイプのスチームトラップにとって、極少ドレン時には、浮力体の周りから水が無くなる為、浮力が働かなくなります。その結果、浮力体であるバケットやフロートは重力で降下してしまいます。
フロートタイプはフロートが降下した状態は閉弁状態ですが、バケットタイプはバケットが降下した状態は開弁状態となり、 蒸気漏れが発生する恐れがあります。
極少ドレン環境でのフロートタイプ
極少ドレン環境でのバケットタイプ
オリフィスナンバーによって最高使用圧力が異なります
メカニカルタイプの特色として、一般的に同じ型式でも オリフィスが複数用意されています。オリフィスによって最高使用圧力が異なります。最高使用圧力を超える圧力で使用した場合には、スチームトラップが閉弁したままとなり、ドレンが排出されませんので注意してください。
TLVでは、種類の異なるオリフィスを区別する為番号をつけ“オリフィスナンバー”と呼んでいます。 詳しくは、トラップとオリフィス 前編とトラップとオリフィス 後編で説明しています。