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蒸気の基本
蒸気の分圧 中編(空気の排除 その1)
空気と蒸気、どちらが重い?
「蒸気の分圧 前編」の回では蒸気を効率的に使用するために、蒸気使用設備内の空気を適切に排除する方法についてお話ししました。本稿では“余分な空気をどこから抜くか”にも関わってくる話として、“蒸気と空気のどちらが重いか”について触れてみます。
- 空気の平均分子量を29とすると、1モル数では29g
- 蒸気(水)の分子量は18なので、1モル数では18g
標準状態にある気体は1モル数なので、空気と蒸気を比べると蒸気の方が軽いと言えます。
※参考:気体の標準状態には以下の2つの定義があります。
- STP定義:1atm、0℃(273.15K)、1mol=22.4L
- SATP定義:1bar、25℃(298.15K)、1mol=24.8L
しかし、実際の条件は・・・
- 比重量は温度、圧力によって大きく異なる
- 熱交換器の蒸気室内は蒸気と空気の混合気体で満たされている
- 蒸気と空気の比率で分圧も変わる
このように標準状態とはかけ離れた状態であり、標準状態での結果をそのまま適用することはできません。
熱交換器の蒸気室部分のような、実際の環境で蒸気と空気の重さについて調べてみると、面白いことに状態によって様々であることが分かります。
例えば、蒸気室に蒸気を入れ始めた状態で、蒸気と空気の混合気体の圧力が圧力計で1.0[MPaG]を示しているとします。この場合、この混合気体の温度が162℃より低い場合は蒸気の方が軽く162℃より高い場合は空気の方が軽くなります。このように空気と蒸気は、混合気体の温度・分圧によりどちらが軽いかが変わります。空気と蒸気の比重量が逆転するポイントをグラフで確認してみましょう。
蒸気と空気の混合気体の圧力(0.1MPaG/1.0MPaG/2.0MPaGの各圧力での例)
“どこから空気を抜くか”という意味では、上からだけでも下からだけでも不十分ということですね。蒸気室の形状によっても空気の抜け具合は大きく異なりますので、多角的に検討する必要があります。