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スチームトラップの基本
トラップの背圧許容度
スチームトラップ出口の背圧とは
スチームトラップの出口にかかる背圧とその影響の感受性を表す値である、スチームトラップの背圧許容度についてご説明します。
まず、背圧の定義を確認しておきましょう。背圧とは、トラップの二次側圧力のことです。例えば、スチームトラップの出口配管が立上げになっている場合は、この立ち上がり高さも背圧として作用します。水柱10mは圧力に換算すると0.1MPaに相当します。
ドレンを回収している場合のスチームトラップの出口には、この立上げ配管の水頭圧力に加え、回収先のタンクの内圧、その場所までのドレン回収配管内の管抵抗、途中に設置されたバルブ等の圧力損失の総和が全て作用し、これがスチームトラップの背圧となります。
各種スチームトラップの背圧許容度
スチームトラップは作動原理から以下の3つのタイプに分類できます。
- ディスク式トラップ
- メカニカルトラップ
- サーモスタティックトラップ
各々、ドレン回収に適したタイプとそうでないタイプがあり、これは背圧許容度の大小で説明することができます。
背圧許容度とは、スチームトラップの二次側圧力(背圧)に対する強さを表す数値で、一次側圧力に対し何%の二次側圧力(背圧)まで使用可能かという性能を示しています。
なお、一次側圧力が一定のとき背圧の値が大きくなってくると、スチームトラップの作動圧力差が小さくなりますので、ドレン排出能力は減少してきます。これは全てのスチームトラップに関して言えることですので、ここでは排出能力の問題は除外して話を進めます。
ディスク式トラップの場合
ディスク式トラップでは、閉弁中は一次側圧力・二次側圧力(背圧)ともに、弁を開弁させる力として働くため、二次側圧力(背圧)が大きいと閉弁状態が維持できず吹き放しになります。
また、経年劣化による背圧許容度の低下も顕著です。新品時には約80%程度の背圧許容度がありますが、作動に伴う弁・弁座の磨耗によりシート面が劣化するため使用期間が長くなるにつれて背圧許容度が低下し、30%程度の背圧でも吹き放しになります。従って、ディスク式トラップは一般に一次側圧力の30~50%以下の背圧で使用することをお奨めします。
メカニカルトラップの場合
一方、メカニカルトラップは、ディスク式と力の掛かる方向が異なります。フリーフロートタイプを例にとると、弁体であるフロートに作用する力は浮力・フロートの自重(重力)・作動圧力差(一次側圧力と二次側圧力の差)による力です。
従って、背圧が増加すると作動圧力差が小さくなりますが、浮力とフロートの自重による開閉弁動作には影響ありません。
このため、新品、使用品のいずれも背圧の影響をほとんど受けず、背圧許容度は極めて高く、「一次側圧力>二次側圧力」の関係が確保される限り作動します。
サーモスタティックトラップの場合
サーモスタティックトラップのうち、蒸気圧力式トラップは、感温部であるサーモエレメント内の封入液の膨張・収縮で生じる圧力の変化によって作動します。このエレメント内の圧力は、トラップに作用する二次側圧力(背圧)に比べて十分に大きな値を持っているので、背圧の影響をほとんど受けず、90%の背圧許容度があります。
しかし、同じサーモスタティックトラップでもバイメタルを使ったタイプでは、閉弁力または開弁力はバイメタルの変形によって生じるため、それぞれの力が小さく、背圧が増大すると開弁力または閉弁力は大きく変化します。
背圧許容度が重要になる場面
このように、スチームトラップはタイプによって背圧許容度が大きく異なります。ドレン回収を行う場合には、背圧許容度の高いタイプを選定することが重要です。場合によってはドレン回収の実施に合わせてスチームトラップの変更が必要なケースもあり得ます。
背圧許容度という単語が使われていない場合もありますのでカタログ等に記載されている、背圧に関する情報を参考に選定してください。
なお、設置したスチームトラップが正常に機能しているか確認ができるよう、トラップ前後に圧力計を設置しておくことも有効です。