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配管
蒸気の送気開始・停止時の注意点 後編
バルブ急開を避ける理由3:急激な温度上昇
蒸気を送気することによって、配管は常温から蒸気温度まで短時間で昇温します。蒸気の送気開始・停止時の注意点 前編で触れた通り、蒸気輸送配管に限れば、温度上昇のスピードはドレン瞬時流量との兼ね合いを考えればよく、昇温スピードが速いことによって管が傷む心配はありません。
例えば調理器具のフライパンは、多くの場合よく熱してから使われますが、ガスコンロの直火と鉄製(鋼製や鋳鉄製)フライパンの関係に比べると、蒸気と配管の温度差ははるかに小さなものです。とはいえ、速く昇温してもゆっくり昇温しても温度差分だけ管は膨張するため、特に長さ方向への伸び(縮み)対策は入念に行う必要があります。
これに対して、蒸気使用装置や蒸気使用設備では、昇温スピード自体に注意が必要です。特に、伝熱部分やその周辺に異なる材質を組み合わせた構造の設備は、熱膨張率の違いから急激な温度変化で変形したり、接合部が分離したりする恐れがあります。例えば、表面にめっきや溶射などのコーティングが施されたロール設備などでは、昇温速度が制限されている場合があります。昇温速度について注意書きがある設備はその指示に従ってください。
蒸気の送気開始時は系内の空気排除にも注意
蒸気の送気開始時に注意すべき点は、バルブの急開だけではありません。系内の空気排除にも気を付けなければなりません。空気排除の速度が、昇温時間や到達温度に大きく影響することは蒸気の分圧 後編(空気の排除 その2)で詳しく解説しています。空気が抜けなければ蒸気は入っていくことができません。多くのスチームトラップには、空気を自動的に排気する自動ブロー機構が備わっていますが、ドレン排除で最大の負荷がかかっているスチームトラップからは、効率的に空気を排除することができません。
蒸気輸送配管のドレン抜きトラップのバイパスバルブを開けたとき、送気開始時に出てくるのは、ドレンではなく空気です。従って、空気をうまく排除しなければ、スチームトラップ本来の排出能力が発揮できなくなります。空気を速く排出することで、蒸気が流れすぎるのではないかと心配する方もおられるかもしれません。しかし、蒸気量はバルブ操作で開度を適正にすることでカバーできるため問題ありません。空気排除は、昇温時間の短縮や正確な温度設定をする上で非常に効果的です。可能な限り様々な場所から、短時間で排気することが理想です。
蒸気の送気停止時の注意点
蒸気の送気を停止する際は、できるだけドレンを残さずに排出させることが重要です。バイパスバルブによってピットなど大気圧の箇所へ解放できる場合は、ある程度残圧がある時点でバイパスバルブを開けることが有効です。残圧によってドレンをブローでき、管内やスチームトラップ内に残ったドレンも圧力が急激に下がって再蒸発(フラッシュ)するため、残留ドレンの量を減らすことができます。