- ホーム
- 蒸気のお役立ち情報
- もっと知りたい蒸気のお話
- スチームトラップの作動点検
スチームトラップの使い方
スチームトラップの作動点検
スチームトラップ点検はまず目視
スチームトラップの作動状況を確認するにはどうすればよいでしょうか。トラップを点検・診断する機器も色々ありますが、そもそもスチームトラップの点検とは何かについて考えてみます。
スチームトラップは、ドレンを排出し蒸気は漏らさない自動弁です。従って、故障のタイプは以下の2つに大別できます。
- 蒸気漏れ
- ドレン排出不良
これらが起きていないかどうかを確認することが、スチームトラップ作動点検の目的です。目視によりドレンの排出状況を観察することが最も手軽な確認方法です。
ドレンが排出されていなければ、目視確認ですぐにわかります。ひどく蒸気を漏らしている場合も大体わかります。
蒸気を漏らし気味になっている故障は、目視では判断が難しい場合があります。それでも深刻な状況は発見できることが多いので、目視確認は重要な点検方法の一つです。
正常 | |||
---|---|---|---|
排出状態 | 少量のドレン排出 | フラッシュ蒸気を伴うドレンの連続排出 | 多量のドレンが連続排出されている |
作動音 | 流れる音はほとんどない | はっきりとした"ザァー"という流動音 | 更に大きな"ザァー"という流動音 |
蒸気漏れ | |||
---|---|---|---|
排出状態 | 生蒸気を伴うドレンの排出 | 生蒸気漏れ | 生蒸気の吹放し |
作動音 | "シャー"という高周波音が発生 | "キーン"という鋭い金属音が聞こえる | より大きな金属音がする |
ドレン排出不良 (詰まり) | |
---|---|
排出状態 | ドレンが排出されない トラップ温度が低下している (休止と間違いやすい) |
作動音 | 作動音はしない |
ドレン排出不良 (容量不足) | |
---|---|
排出状態 | 穏やかな流れ スチームトラップの容量が不足している |
作動音 | あまり作動音はしない |
ところが、スチームトラップの二次側はドレン回収などのため配管に接続されていることも少なくありません。サイトグラスが設置されていない場合、目視確認ができないことがあります。この場合は目視以外の方法を考える必要があります。
目視できない状況下で状態を判断するためには、振動と温度を観察する方法が考えられます。これは他の機械を点検する場合と同様です。
音を手がかりにします
振動を観察するには音を手がかりにします。スチームトラップは弁機構を備えているため、弁の開閉作動に伴う機械的な音である作動音と、ドレンが流れる音を聴いて判断することができるはずです。異常な音がしていればもちろん故障を疑う必要があります。
異常な音(比較的分かり易いディスクトラップのチャタリング)の例
流れる音はどうでしょうか。本来はドレンが流れる音がしていますが、蒸気が流れる音がしていれば蒸気漏れを疑う必要があります。もっとも、ドレンが流れる音と蒸気が流れる音を聞き分けるのは容易ではなく、かなりの経験と知識が必要です。
温度を手がかりにします
温度も重要な判断材料です。スチームトラップの温度は最高で蒸気の温度まで上昇します。従って、まず蒸気の温度を基準に考えましょう。
正常または蒸気漏れの場合
蒸気漏れを温度だけで察知することはかなり困難です。なぜなら、ドレンをただちに排出するタイプのスチームトラップの場合、排出されるドレンの温度は飽和温度に近く、飽和状態であれば蒸気とドレンの温度は同じですので、両者の区別はつきません。
ドレン排出不良(詰まりトラブル)の場合
温度はむしろ、詰まりやトラップ容量不足によるドレン排出不良が起きていないかどうかの判断に有効です。ドレンの排出に問題があると、スチームトラップの表面温度も低下してきます。これを捉えることで、詰まりなどドレンが上手く排出されていないトラブルを発見することができます。
但し、蒸気使用装置が温度制御されている結果として、スチームトラップの表面温度が低い場合もありますので、蒸気圧力や使用状況など周辺情報と照らし合わせて判断することが必要です。
点検のための機器
音や温度はどのような機器を使って観察すればよいでしょうか?
スチームトラップ内部の音を聴くためには、小さな音を大きく増幅して聴くことができる聴診器があれば便利です。
医師が使用するようなダイヤフラムを直接対象に押し当てるタイプは、平らな面の少ないスチームトラップには向かず、耐熱性にも不安があります。聴針とダイヤフラムを組み合わせた専用の聴診器が適しています。
音を聴く場所は、聴きたい音が良く聞こえる場所ということになりますが、色々な場所の音を聞いて総合的に判断しなければなりません。
温度を測るための温度計には様々なタイプがありますが、熱電対などをセンサーに用いたデジタル表示式のものが使いやすいでしょう。
音と違って温度は測る場所が決まっています。必ずスチームトラップの一次側で測り、二次側で測ってはいけません。
二次側の温度は、その雰囲気の圧力での飽和温度までしか上がりません。例えば二次側が大気開放であれば、一次側の蒸気温度が250℃であったとしても100℃以上には上がらず、正しい判定はできません。
TLV製の点検ツールである、日常点検用のポケット型チェッカーや精密診断用のトラップマンシステムも、基本的には温度と振動を測定してスチームトラップの作動状況を判定しています。