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スチームトラップの基本
スチームトラップとは
トラップ=罠?
スチームトラップとは、蒸気雰囲気の中からドレンだけを排出して、蒸気を極力漏らさないという用途に用いられる自動弁の一種です。スチームトラップを直訳すると、スチーム=蒸気、トラップ=罠ですが、JIS B 0100バルブ用語では「トラップ」は、「機器、配管などからドレンを自動的に排出する自力式のバルブの総称」と定義されています。
何のために設置するか
蒸気は、高温高圧下で水が気体になってできた物ですが、仕事を終える(=潜熱を放出する)と凝縮してドレンになります。ドレンには蒸気本来の仕事をする能力はありません。そのため、蒸気輸送配管内でも熱交換器内でもドレンは速やかに排除すべきと言えます。
スチームトラップが必要な理由(ジャケット釜の例)
“普通”のバルブではダメ?
「それなら、バルブの開度を調整して、ちょうど発生したドレンが排出されるようにすれば、スチームトラップを使わなくても良いのでは?」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
これはある限られた条件においては正解ですが、適用範囲は極めて限られているため現実的ではありません。
バルブの開度を半固定にした場合の最大の問題は、ドレンの発生量が変化した場合に追従しないことです。ドレンの発生量は一定ではありません。装置の場合は、スタートアップ時と定常時、被加熱物量が変化した時それぞれでドレン発生量が違います。また、蒸気の輸送配管では、外気温の変化や降雨・積雪の有無でドレン発生量が異なります。
ドレン量の変化に追従できないと、排出すべきドレンをためてしまったり、止めるべき蒸気を漏らしてしまったりします。
バルブの開度を半固定にしてスチームトラップの代わりをしたら
良いスチームトラップの見分け方
スチームトラップが備えておくべき機能を整理すると以下の3つになります。
- できるだけ速やかに、ドレンを自動的に排出する
- できるだけ蒸気を漏らさない
- できるだけ速やかに、空気等不凝縮ガスを自動的に排出する
ドレン排出箇所に設置する自動弁なので、ドレンの排出ができなければ存在意義がありません。加えて、ドレン排出は単に排出すれば良いという訳でなくいかに速く排出できるかどうかが重要です。
ドレンがたまると、蒸気室に滞留するドレンによって伝熱面積が減少し加熱能力不足に陥ったり、滞留ドレンの温度低下によって温度ムラが生じたり、滞留ドレンと蒸気の接触でウォーターハンマーが発生するなど、多くの問題が発生する可能性があります。
2.については、蒸気漏れのひどいスチームトラップでは、前述のようにバルブを半固定しているのと大差ありません。3.も、不凝縮ガスを抜くために人手によるバイパス操作などが必要であれば「自動でドレンを排出する」スチームトラップの威力も半減というものです。
1~3の“できるだけ”の部分がどれだけ満たされているかによって、スチームトラップの性能に違いが生じます。つまり、この条件を最も満たしているスチームトラップこそ、良いスチームトラップと言うことができます。
様々な機構があるスチームトラップ
自動で排出を行うための機構として様々な方法(作動原理)が開発されていますが、現在主に使用されている方法には、
- 温度を利用する方法
- ドレンと蒸気の比重差を利用する方法
- 温度変化による圧力の変化や運動エネルギーを利用する方法
などがあり、それぞれトラップの特徴にもなっています。