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蒸気の基本

蒸気の伝熱

 

蒸気加熱の代表的な特長

熱媒体として見た場合の蒸気には、他の熱媒体にはない優れた特長があります。中でも代表的な特長は以下の2つです。

  • 均一な加熱ができる
  • 素早い加熱ができる

本稿ではこれらの特長について伝熱の面からもう少し詳しく考えてみます。

 

なぜ一定温度かつ均一な加熱ができる?

飽和蒸気は圧力が決まれば蒸気の温度も決まります。圧力は空間内で瞬時に変化します。そして、飽和蒸気の凝縮は飽和温度のまま起こります。飽和蒸気と凝縮した飽和水の温度は同じです。すなわち、伝熱面(装置のジャケットやコイル内)を一定の圧力に保つことができれば、伝熱面のどの場所でも同じ温度で加熱を続けることができます。

伝熱面(装置のジャケットやコイル内)を一定の圧力に保つことができれば、伝熱面のどの場所でも同じ温度で加熱を続けることができます。

 

加熱のスピード

熱の移動の大きさを表す指標に熱伝達率(=境膜伝熱係数)があります。
単位は[W/(m2・K)](m2=平方m ・・・以下同じ)です。
W=J/sec.ですから、同じ伝熱面積と同じ温度差で熱交換を行うとすれば、熱伝達率が大きいほど短時間で加熱ができることになります。

温水と蒸気の熱伝達率はおおよそ以下の値です。

温水熱源で熱交換器の伝熱面へ熱が伝わるときの熱伝達率1000~6000[W/(m2・K)]

蒸気熱源で熱交換器の伝熱面へ熱が伝わるときの熱伝達率6000~15000[[W/(m2・K)]

実際の加熱では、熱交換器壁材内の熱の伝わり方・熱交換器壁面から被加熱物への熱の伝わり方が関係してきますので、それらを総合した指標として熱通過率[W/(m2・K)](=総括伝熱係数とも呼ばれます)で評価する必要があります。この係数は熱交換器によってかなり開きがありますが、それでも蒸気加熱は温水加熱に比べると、1.5倍~2倍程度の数値を示します。

熱通過率の計算式等は「100℃以下の蒸気 後編(真空蒸気加熱システム)」でもご説明しています。

 

なぜ素早い加熱ができる?

凝縮伝熱(蒸気)

そのヒミツはやはり凝縮伝熱です。
蒸気は凝縮して液体に戻る瞬間に、保有している潜熱を放出します。放出される潜熱の量を凝縮後の温水(飽和水)がもつ顕熱の量と比較すると、その差は実に2倍~5倍程度にもなります。この熱が一瞬のうちに放出され、熱交換器を介して被加熱物に伝わります。

凝縮伝熱(蒸気)

対流伝熱(温水や油)

一方、温水などは相変化を伴わない対流伝熱であり、熱媒体は自身の温度を下げながら被加熱物へ熱を伝えます。工業的にはポンプなどで加圧して伝熱面に流れを作る強制対流が主流です。

対流伝熱(温水や油)