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蒸気の基本

伝熱 前編(平板の場合)

 

伝熱とは

蒸気を用いた生産プロセスで、蒸気は多くの場合、熱源として使われています。熱は温度の高い所から低い所に移動し、この熱が移動する過程を伝熱といいます。

熱力学的に伝熱は、「熱伝導」「熱伝達」「熱放射」に分類されますが、蒸気を用いた間接加熱における伝熱の大部分を担うのが「熱伝導」と「熱伝達」ですので、今回は前編としてこれらの平板の場合について説明します。また、円筒の場合については「伝熱 後編(円筒の場合)」で説明しています。

 

熱伝導

蒸気で間接加熱を行う場合、熱交換器の伝熱面を介して、高温側である蒸気と、低温側である被加熱物とが相対します。つまり、伝熱面片側は高温、片側は低温となり、この温度差によって熱が伝導され移動していきます。

総括伝熱係数

この、物体内の熱の伝わりやすさのことを「熱伝導率」といい、物質に固有の値です。記号λで表され、単位は[W/(m・K)]を用います。     
熱交換器の伝熱面の蒸気側高温部(t2)から被加熱物側低温部(t3)に伝わる熱通過量Q[W]は、平板伝熱面の壁の厚さをL[m]、伝熱面の面積をA[m2]とすると、以下になります。

Q=λ/L・(t2‐t3)・A

熱伝導率λ[W/(m・K)]の値は、大きいほど熱が伝わりやすく、例えば下表のように銅など一般的に金属は大きな値を示すのに対し、ガラスや煉瓦などは小さく、空気は更に二桁くらい小さな値となります。これらから伝熱部分には金属が使用されることや、逆に断熱材として煉瓦が使用されること、あるいは伝熱部分から空気を排除しなければならないことの説明が出来ます。

代表的な熱伝導率の例
 熱伝導率 λ[W/(m・K)]
386
ガラス/煉瓦1前後
空気0.025

 

熱伝達

「熱伝達」とは、流体と物体間の熱移動のことです。熱伝達には、対流熱伝達、沸騰熱伝達、凝縮熱伝達などがあります。主としてどのような形態で熱が伝わるかによって「熱伝達率」の値は大きく異なります。例えば同じ釜から水に熱が伝わる場合でも、自然対流なのか強制対流なのかによって値が異なります。

熱交換器では、熱源から伝熱面への熱伝達、伝熱面から被加熱物への熱伝達を考慮する必要があります。

熱伝達率αは[W/(m2・K)]で表し、熱通過量Q[W]は次の式で表します。

Q=A・α1・(t1‐t2)=A・α2・(t3‐t4)

蒸気による間接加熱の場合、α1は蒸気から伝熱面への熱伝達率、α2は伝熱面から被加熱物への熱伝達率、(t1)は蒸気温度、(t2)は蒸気側伝熱面温度、(t3)は被加熱物側伝熱面温度、(t4)は被加熱物温度です。

代表的な熱伝達率の例
 熱伝達率 [W/(m2・K)]
凝縮する蒸気6,000~15,000
流れる水500~4,000
流れる空気10~300

 

全体としての熱の伝わりやすさ(総括伝熱係数U値)

熱交換器を長期間使用すると、伝熱面の表面に汚れやスケールが堆積します。これらは伝熱を阻害しますので汚れ係数と呼ばれ、r[(m2・K)/W]で表します。「熱の伝わりにくさ」を表したものであり、単位もちょうど熱伝達率の逆数になっています。

代表的な汚れ係数の例
 汚れ係数 [(m2・K)/W]
凝縮する蒸気0.00004~0.00006
清水0.0001~0.0002
重油0.001~0.002

熱伝導率λや境膜伝熱係数hも含めた、全体としての伝熱部分の熱の伝わりやすさを、一般的には総括伝熱係数U値[W/(m2・K)]といい、次の式で表します。

1/U=1/h1+r1+L/λ+r2+1/h2

従って、実際の熱交換器における熱通過量Q[W]は、次の式で表します。

Q=A・U・(t1-t4)

総括伝熱係数Uを用いることにより、伝熱面積・温度差・U値の積という非常にシンプルな形で表現されます。例えば同じ釜(AとUが同じ)でも熱源温度を上げると多くの熱が供給できるということがこの式からわかります。

温度差は熱源側の温度と被加熱物側の温度の差ですが、被加熱物の温度(t4)は加熱によって変化しますから対数平均温度差が用いられます。

尚、総括伝熱係数については、蒸気のお話「100℃以下の蒸気 後編(真空蒸気加熱システム)」でも説明しています。

円筒の場合については「伝熱 後編(円筒の場合)」で説明しています。