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蒸気のトラブル

ストール現象 前編(発生原因と問題)

 

ストール現象の発生原因

ストール現象という言葉はご存知ですか?聞いた事が無いという方でも、次に挙げるような課題に直面されている方は結構いらっしゃるのではないでしょうか?

  • ヒーターがよくパンクする
  • ヒーター内部からウォーターハンマー音がする
  • 均一加熱ができない

このような現象が装置で起こっているなら、ストール現象が発生しているかもしれません。ストール現象とは一言で言うと、 
「トラップの作動差圧(トラップ前後の圧力差)がなくなり、トラップからドレンが排出されずに熱交換器内に滞留してしまう現象」と言えます。

スチームトラップ自体はドレンを吸引したり圧送したりする能力は持っていません。ではなぜトラップからドレンが排出されてくるのでしょうか?それはトラップの一次側とトラップの二次側に圧力差があるからです。したがってトラップが正常に作動するためには、当然トラップ一次側の圧力は二次側圧力より高い必要があります。

蒸気システムは元々そのように設計されていますが、温度制御弁が採用されている場合などは運転中にこの圧力差が逆転してしまう事があります。 
通常、熱交換器は最大負荷に合わせた大きさに設計されます。熱交換器の伝熱面積は一定で可変できませんが、負荷は運転状態により変動します。例えば、熱風ヒーターにおいて風量が減少した場合、今までと同じ熱風温度を維持するためには、熱源である蒸気の温度(圧力)を下げていくしかありません。

温度制御弁が全閉に向って弁開度を絞り、熱交換器内部の圧力が低下した結果、トラップ一次側圧力が二次側圧力より低くなり、ドレンはトラップから排出されなくなります。

蒸気を熱源として使用する熱風ヒーターでストールが発生するメカニズム

0.3MPaGの蒸気を制御弁・温度センサー・調節計を使用して80℃の熱風が得られるようにコントロールしています。このようなケースにおいてストール現象が多く発生します。圧力計の指針やバルブの開度表示、測定温度表示によってコントロールとその時の状況が確認できます。

蒸気を熱源として使用する熱風ヒーターでストールが発生するメカニズム

 

ストール現象による問題

トラップから排出されないドレンはトラップ手前すなわち熱交換器側に滞留することになります。この状態が「ストール現象」です。ストール現象はトラップの一次圧が回復すれば解消されますが、それまでの間、ドレンが熱交換器内部に滞留していますので、冒頭に挙げたような様々な問題が発生します。

ウォーター八ンマー

滞留ドレンと蒸気が接触して蒸気が急凝縮するウォーターハンマーが発生することがあります。下図のシェルアンドチューブ熱交換器のような細管を持つ装置では、ハンマーの衝撃でチューブが破損することがあります。

シェルアンドチューブ熱交換器のような細管を持つ装置では、ハンマーの衝撃でチューブが破損することがあります。

温度不均一

ジャケット釜などで起こるストール現象は深刻な温度不均一問題を引き起こします。

ジャケット釜などで起こるストール現象は深刻な温度不均一問題を引き起こします。

前述の通り、トラップの作動に必要な圧力差が十分に確保できなくなる状態がストールですから、トラップの交換だけではストール現象の解消はできません。 
ストール現象の解消法としていくつか考えられます。

  • トラップの二次側圧力をより低くする
  • パワートラップを使用する