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蒸気のトラブル

スチームロッキング 後編(周辺の配管に原因がある場合)

 

スチームトラップ手前の立ち上がり配管はNG

スチームトラップには異常が無いのにドレンを上手く排出できなくなる現象「スチームロッキング」について、スチームロッキング 前編では、発生原因の一つである「装置の構造自体が原因の場合」について説明しましたが、「トラップ周辺配管に原因がある場合」について詳しく説明します。

立ち上がり配管とは、垂直配管で下から上に向かって流れ方向が設定されている配管を指します。スチームトラップ手前にそのような配管があると、スチームロッキングの原因となり、ドレンを正常に排出できません。

スチームトラップ手前の立ち上がり配管はNG

 

なぜ後は良くて手前はダメ?

同じ立ち上がり配管でもスチームトラップ二次側の立ち上がり配管は問題がなく、日常的に施工されています。これに対して、スチームトラップ一次側の立ち上がり配管がNGなのは何故でしょうか?

立ち上がり高さによる水頭圧に打ち勝つ蒸気圧力で押されれば、順に流れてドレンはスチームトラップへ流れ込むのでは?すなわち、蒸気圧力が十分に高ければ問題ないのではないか?と思われるかも知れません。

では、本当に蒸気圧力さえ十分にあればドレンは排出されるのでしょうか?スチームトラップからドレンが排出される上でポイントとなるのは、以下の2点です。

  • スチームトラップ一次側配管はトラップ内部と同圧であること
  • 流れはトラップ開弁時(ドレン排出時)だけ起こること

スチームトラップとは、蒸気を漏らさずにドレンだけを排出する自動弁ですが、これは言い換えれば、スチームトラップ一次側の圧力を維持しながらドレンだけを排出する働きがあるということです。

同圧であれば、比重の大きなドレンは下方へ、比重の小さな蒸気は上方へと分かれていきます。立ち上がり配管部では、蒸気が先に上方へと進みスチームトラップに流入してしまう為、スチームトラップは閉弁し、何も流れなくなります。つまり、スチームロッキング(蒸気障害)状態となるのです。何も流れないということは、「より高圧で押して流す」ということも当然できません。

スチームロッキングは、閉じ込められている蒸気がいずれ凝縮することで一旦解消して流れ始めますが、その間はドレンがトラップに流入できず、最悪はスチームトラップ一次側の装置内にドレンが滞留することになります。

スチームロッキングが一旦解消されて、配管内を水封していたドレンが無くなると、またスチームトラップに蒸気だけが流入してスチームロッキング状態になってしまいます。これがスチームトラップ手前の立ち上がり配管がNGとされている理由です。

スチームトラップ手前の立ち上がり配管はNG

 

スチームトラップ二次側配管の場合

しかし、垂直配管部で蒸気が上方へ集まるのはなにもスチームトラップ一次側配管だけで起こることではなく、二次側配管も同じでは?という指摘もあるでしょう。

確かに蒸気が上方へ集まるのは同じです。スチームトラップ二次側配管にはドレンから生じたフラッシュ蒸気も存在します。しかし、スチームトラップ二次側配管にはもうスチームトラップはありませんから、蒸気(フラッシュ蒸気)が先に流れていってもそれが止められることはありません。

更に、スチームトラップ二次側配管は、その先が大気開放のタンクであれ、有圧のフラッシュタンクであれ、必ずスチームトラップの作動圧力差が確保できるように圧力差が設けられた配管でなければいけません。こうして、スチームトラップ二次側配管では、流体(=ドレンと蒸気)は流れ続けることができるのです。

スチームトラップ二次側配管の場合:スチームロッキング

 

立ち上がり以外にも注意すべき配管があります

スチームロッキングの典型として立ち上がり配管で説明してきましたが、この他、完全に垂直な立ち上がり配管でなくても注意しなければならない配管があります。

スチームトラップ手前配管に先上がりの逆勾配が付いている場合

逆勾配配管は角度こそ違えども、そこで起きることは立ち上がり配管と全く同様です。見落としがちですが、横引き配管で撓んでいる場合でも同じことが言えます。

スチームトラップ手前配管に先上がりの逆勾配が付いている場合:スチームロッキング

スチームトラップ手前で細い配管が長く横引きされている場合

細長い横引き配管では、蒸気とドレンの置換が十分に行えないため、スチームトラップへドレンが流入するのを妨げてしまうことがあるのです。これもスチームロッキングです。

スチームトラップ手前で細い配管が長く横引きされている場合:スチームロッキング

この他、メカニズムは異なりますが、グループトラッピングもスチームロッキングの原因となります。グループトラッピングはグループトラッピングで説明していますのでそちらをご覧ください。

さらに、蒸気ではありませんが、空気配管系統においてエアトラップやドレントラップで類似の障害が発生することがあります。トラップ内部に存在する空気によってトラップが閉弁してしまうエアバインディングと呼ばれる現象です。空気は常温下で放熱しても凝縮はしませんので、均圧管という専用の「戻り配管」を敷設して対応します。