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スチームトラップの基本
スチームトラップの歴史 後編
どのようなトラップが生き残るのか
「スチームトラップの歴史 前編」では、浮力を利用したメカニカルな原理のバケット式から始まり、その後、温度差を利用したサーモスタティックなバイメタル式、蒸気→ドレンの相変化やエネルギー保存則などを利用するサーモダイナミックなディスク式と続いて登場してきたことをご紹介しました。 今回は、各作動原理のトラップの中で、現在はどのようなトラップが多く使われているのか、その理由も合わせてご紹介します。
メカニカルトラップの変遷
最も歴史のあるメカニカル・トラップの中では、比較的簡単に量産のできるバケット式が最初に開発されました。初期に多かった上向きバケット式は、レバーで弁を開閉する構造ではなく、バケット自体の浮力で弁を開閉する構造なために大型なものが多く、あまり使われなくなりました。一方、レバー機構を上手く活用でき、比較的小型化できる下向きバケット式は現在も使われています。
浮力体が密閉構造であるフロート式はフロートを作ることができるだけの加工技術の進歩を待つ必要があり、バケット式より後年になって実用化されました。ドレンを連続排出するため、蒸気プロセスに溜めず、寿命も比較的長いので現在では大きな排出量が必要な装置用トラップの主流となっています。
サーモスタティックトラップの変遷
メカニカルトラップは、浮力体とそれを収めるボディが必要であり大きくなりがちです。よりコンパクトなものを求めるニーズからサーモスタティック・トラップが登場しました。
これらのトラップには温度を感知する機構として、ベローズやバイメタルが使用されますが、いずれも作動が緩慢なため、速やかなドレン排除が求められる加熱プロセスには適しません。そのため現在はバイメタル式の中でもドレンの排出温度を任意に設定できる機能が付加されたスチームトレース用の温調トラップがこのタイプの中心です。また作動が緩慢であるという弱点に対しては、封入した感温液の膨張・凝縮を利用した蒸気圧式が登場しています。
サーモダイナミックトラップの変遷
小型ではあったものの、緩慢な作動が課題のサーモスタティックトラップに対して、できるだけドレンを溜めないものをというニーズからサーモダイナミック・トラップが登場します。
しかし、初期に多かったインパルス式は蒸気ロスが大きかったのでその後に開発されたディスク式が主流となりました。このディスク式は、コンパクトであることはもちろん、汎用性がありイニシャルコストも比較的安いという点が優れており、スチームトラップの歴史の中では最も数多く使用されています。
進化し続ける現代のトラップ
さて、現在も上記の3つのタイプのスチームトラップが使用されていることはこれまで述べてきた通りですが、現代のトラップはどのような進化をしているのでしょうか?それぞれのタイプの特長をさらに活かすような改良を中心に進化していると言えます。
例えば、自動ブロー機構は、通気初期の空気を自動的に排除して、スタートアップ時間の短縮と、バルブ操作工数の削減を図ることができ、現在では多くのトラップに採用されています。装置用トラップには高温空気も排除できる高機能な自動ブロー機構を備えているモデルもあります。
使い勝手の観点では、詰まった場合でも分解することなく詰まりを解消するクリーニング機構を持つ製品が開発されています。これにより、分解修理や取替を別途計画することなく、日常点検時に発見した詰まりはその場で処置して復旧できるようになりました。
このように目に見えにくい部分でもスチームトラップは進化を続けています。
自動ブロー機構
- X-エレメントによる自動ブロー
- バイメタルによる自動ブロー