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蒸気の制御
真空気化冷却
気化冷却
気化冷却とは、液体が蒸発(気化)する際に周囲の熱(気化熱)を奪い冷却することです。水が蒸発するのは蒸発潜熱を得るからです。このとき水は蒸発潜熱を受け取っていますが、温度の高い側からすると、蒸発潜熱分の熱量を奪われていることになります。
これを積極的に利用するのが気化冷却システムです。意外に身近なところにも、気化冷却の原理が利用されています。
例えば、市販されている自動車でも、高性能機種では過給器と組み合わされる空冷式インタークーラーの冷却性能をアップさせる目的で、気化冷却のための水噴射装置を備えているものがあります。
厳しい暑さの日が増えている昨今、注目されている打ち水も、気化熱を利用して路面などの温度を下げる気化冷却です。
真空気化冷却
水の蒸発は大気圧下常温でも起こります。これは、空気と水蒸気の分圧に応じた質量が蒸発しているだけで、“沸騰”しているわけではありません。もし、40℃でもどんどん沸騰して蒸発していく状態ならば、潜熱の受け渡しも最大限になるはずです。
大気圧では100℃で沸騰します。では、大気圧よりも圧力を下げると・・・100℃よりも低い温度で沸騰が生じます。これは、飽和温度が100℃以下になるためです。詳しくは100℃以下の蒸気 後編(真空蒸気加熱システム)で説明しています。
真空蒸気加熱では、100℃以下の飽和蒸気を加熱源として利用するのに対して真空気化冷却では、100℃以下で発生する沸騰現象を利用します。
生産設備としての真空気化冷却
真空気化冷却で用いる温度域での蒸気の飽和圧力は、真空と言っても数kPaの世界であり、その程度まで圧力を下げること自体はそれほど難しくありません。厄介なのは、気化冷却工程では冷却すればするほど伝熱面で大量の蒸気が発生し、この処理が必要となってくることです。
この圧力域では蒸気の体積は水の千数百倍になるため、発生する蒸気を排気しなければすぐに圧力が上昇してしまいます。圧力が上昇すれば目的の温度で気化冷却させることができなくなります。
そのため、気化冷却システムでは、空気を吸引して真空を作り出すだけではなく、気化冷却中に次々発生する蒸気を吸引排気できるだけの大きな排気能力を持つ真空ポンプを使用します。
真空気化冷却の活用場面
このように、気化冷却は真空域で水の気化を促進させることで、蒸気加熱に匹敵する伝熱性能を冷却側で実現します。実際の現場では以下のような目的で利用されています。
- 速く均一な冷却により、不純物の生成を減らしたい
- 発熱反応を抑える大きな冷却能力により、増産に取り組みたい
- 速く冷却を行うことで、工程サイクルタイムの短縮を図りたい
また、気化冷却技術と真空蒸気加熱を組み合わせれば、素早い加熱・冷却の切替えが可能となり、高精度な温度制御も実現できます。高い再現性、制御性から以下のような場面での活用が進んでいます。
- 原料の滴下投入、発熱反応、吸熱反応、攪拌熱など、内温変化要因に素早く対応したい
- ユーティリティーの種類が多く、切替えタイムラグ間の温度バラツキをなくしたい
- 新製品のパイロット化や実生産に向けて、プロセス条件を早く決定したい
- 新製品開発のために、生産条件を複数試したい