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蒸気のトラブル

ウォーターハンマー (発生のメカニズム)

ウォーターハンマー(スチームハンマー)とは?

水道の蛇口を急に開閉すると「カン!」という音がします。これは水配管系でのウォーターハンマーで、工場などではポンプの起動・停止やエアベントの急閉止などで発生します。

水配管系とは別に、蒸気・還水管系でもウォーターハンマーは発生します。蒸気やドレンによって発生するウォーターハンマーを海外ではスチームハンマーとも呼んでいます。今回は、この蒸気・還水管系のウォーターハンマーに焦点を当ててお話しします。

ウォーターハンマー(スチームハンマー)は非常に危険!

蒸気配管や蒸気使用設備に蒸気を通気し始める時、「カン、カン・・・」という金属音や、時には「ドーン」という激しい衝撃音と振動が発生することがあります。皆さんもご経験があるのではないでしょうか。
実際にウォーターハンマーが発生する様子を、実験で再現した実写映像がありますのでご覧ください。

ウォーターハンマーが発生すると、その配管内では瞬時的に10MPa以上もの急激な圧力変化が起こることがあります。

この衝撃によって配管や装置、建屋の大きな揺れが生じ、接合部のガスケットだけでなく、ときにはバルブそのものやフランジが破壊されます。

ウォーターハンマー(スチームハンマー)による配管などの破壊例

万一、バルブ等が破壊されると一気に大量の蒸気や高温ドレンが噴出し、大きな事故になる危険性があります。海外では、ウォーターハンマーが原因と見られる死亡事故も報告されています。このように危険なウォーターハンマーですが、その発生原因・対策についての研究や文献が非常に少なく、多くの方が対応に苦慮されているのが実情です。

ウォーターハンマー(スチームハンマー)の種類別の発生箇所

ウォーターハンマー(スチームハンマー)の種類別の発生箇所

ウォーターハンマー(スチームハンマー)の発生原因

ウォーターハンマーは文字通り、“ウォーター”つまり水の塊が配管等に衝突したり、塊同士が衝突して、あたかも“ハンマー”のように大きな衝撃を与える現象です。

では、なぜ水が配管等に大きな衝撃を与えるのでしょうか?

蒸気・還水管系のウォーターハンマー発生には、主に2つのパターンがあると考えられています。

  • 配管内の高速ドレンが衝突して起こるウォーターハンマー
  • 蒸気が急激に凝縮しドレン同士が衝突して起こるウォーターハンマー
配管内の高速ドレンが衝突して起こるウォーターハンマー

蒸気を輸送する配管では放熱によりドレンが発生します。蒸気が高速で配管内を流れると、滞留していたドレンは蒸気の流れに押されて、次第に塊を作り移動を始めます。これは台風の際に発生する高波に近いと言えます。

このドレンの塊が蒸気の流れによって高速で配管の中を移動し、配管の曲がり部分や配管途中のバルブに衝突してウォーターハンマーが発生します。

配管内の高速ドレンが衝突して起こるウォーターハンマー

蒸気が急激に凝縮しドレン同士が衝突して起こるウォーターハンマー

蒸気は放熱するとドレン化します。蒸気とドレンの比体積差は1000倍以上もありますが、蒸気は冷たいドレンに触れると一気に凝縮して蒸気体積がほぼゼロになります。

この凝縮過程で蒸気が存在していた空間は一時的に真空状態になり、この真空部に向かって配管内のドレンが押し寄せ、ドレン同士が衝突することによってウォーターハンマーが発生します。

つまり、冷たいドレンと蒸気が混在する環境が危険といえますが、還水管などはむしろそのような環境が通常であり、対策が難しいのもこのパターンの特徴です。
蒸気輸送管や蒸気使用装置内でも凝縮によるウォーターハンマーは発生します。

蒸気が急激に凝縮しドレン同士が衝突して起こるウォーターハンマー

どちらのパターンでも強大な衝撃が発生しますが、発生頻度は圧倒的に2つめの凝縮パターンによるものが多いと考えられます。

冷たいドレンの方がハンマーの衝撃は大きい?

当社で実施した実験から意外な事実が判明しました。これまで、ドレン温度が低いほど大きなウォーターハンマーが発生するという見方がありましたが、冷たいドレンよりも、蒸気温度から少し低い温度のドレンで起こるウォーターハンマーの方が衝撃が大きいという実験結果が得られたのです。

具体的には、100℃の蒸気に対し、50~60℃のドレンで発生するハンマーより70~80℃のドレンで発生するウォーターハンマーの方が、規模が大きく衝撃も強大でした。

冷たいドレンよりも、蒸気温度から少し低い温度のドレンで起こるウォーターハンマーの方が衝撃が大きいという実験結果

実は、ウォーターハンマーの衝撃をシミュレートする計算式には、凝縮する蒸気の体積(=これを蒸気塊と呼びます)が大きく関係します。

これは次のように考えることができます。

  • 蒸気が冷たいドレンと接触すると、すぐに凝縮してしまいます。小さい気泡の段階で凝縮するので「蒸気塊」は成長できません。

また一方で、

  • 同じ温度のドレンと接触しても蒸気はすぐには凝縮しないので、ウォーターハンマーは発生しません。

これは、スチームトラップの出口には飽和ドレンと同じ温度のフラッシュ蒸気が混在しますが、ウォーターハンマーが起きないことからも説明できます。

厄介なのは、このいずれでもない条件です。すぐには凝縮しないにもかかわらず、何かのきっかけで凝縮を始める温度のドレンです。70-80℃という温度はウォーターハンマーの威力に影響する「蒸気塊」を成長させ、ある時突然に急凝縮させる危険なドレン温度だったのです。

では、何がきっかけとなるのでしょうか?ウォーターハンマー (対策 その1)では、ウォーターハンマーを発生させるきっかけと蒸気配管のウォーターハンマー対策について考えます。