蒸気のトラブル
発電所の配管トラブル 後編(トラップ一次側)
ドレントラップ一次側の蒸気輸送配管で起こるトラブル
発電所の配管トラブル 前編(トラップ二次側)でのドレントラップ二次側(下流側)の還水配管に続き、トラップ一次側の蒸気輸送配管の減肉・穴開きについて見ていきます。
蒸気輸送配管内で生じる蒸気凝縮ドレンは、ウォータハンマーの原因になったり、ドレン水滴が配管に打ち付けられるドレンアタックによるエロージョンの原因になったりすることがあります。そのため、蒸気輸送配管には蒸気凝縮ドレンを排除する目的で、必ず水抜きの配管が分岐しています。
更に、末端にも水抜き配管があり、その先にはドレントラップ(スチームトラップ)が設置されています。このドレントラップ自体が原因で、蒸気輸送配管内でトラブルが発生する場合があり、注意が必要です。
※スチームトラップはJISでは蒸気トラップ(steam trap)と記載され、一般的にはスチームトラップと呼ばれますが、発電所ではスチームトラップも他の気体用トラップと同様に「ドレントラップ」と呼ぶことが多いため、本稿では以下ドレントラップと記載します。
ドレントラップは蒸気系統の「水抜き」として、蒸気凝縮ドレンを自動的に排出するために設置します。ドレントラップに関連する大きなトラブルには次の2つがあります。
- ドレンを排出することができない
- 蒸気を漏らしてしまう
このうち、ドレントラップ一次側配管の安全面や安定運転に大きな影響を及ぼすのは、ドレンを排出できなくなることです。水抜きが必要で設置したドレントラップが機能せずドレンが滞留すると、エロージョンによる配管の穴開きなどに繋がる恐れがあります。
それに比べると、蒸気を漏らしてしまうことは省エネやコストの点からは問題ですが、一次側配管の安全面や安定運転の面では比較的影響が小さいといえます。
トラブルが発生しやすいドレントラップのタイプとは?
ドレントラップの故障が原因でドレンが排出できなくなったり、蒸気が漏れてしまった場合は、故障を復旧する処置をします。ドレントラップが正常であっても、ドレントラップのタイプによってはうまくドレンを排出できない場合があります。ドレントラップのタイプは、ドレン排出形態によって以下の2つに分けることができます。
- 間欠的に排出するドレントラップ
- 連続的に排出するドレントラップ
間欠的に排出するドレントラップ
間欠排出するタイプでは、開弁、閉弁が交互に起こり、ドレンを排出する時間帯と、排出せずにドレントラップ一次側にドレンをためる時間帯ができます。開閉サイクルが長い機種の場合、ドレントラップ一次側に滞留したドレンが蒸気輸送配管まで到達してしまう場合があります。こうなると、蒸気輸送配管からドレンを排除するというドレントラップ本来の役割を果たさず、エロージョンなどのトラブルに繋がる可能性があります。